【たかせクリニック高瀬理事との対談】
第4回 山下先生特別対談その1 高齢者の歩く機能について

右奥:山下先生 右手前:高瀬先生
今回ご紹介する対談の内容は、認知症発症のきっかけにも大きく関係のある
“歩くこと”をテーマとしています。
歩く機能、そしてフットケアの専門家であるたかせクリニックの山下先生をお招きし、
弊社取締役の小林との対談を2回に亘り掲載します。
今回のテーマは「高齢者の歩く機能について」。大変有意義な対談となりました。
山下:超高齢社会の進行と共に、高齢者のフレイル対策、健康支援、活動支援が重要だと考えています。その中で、高齢者はアクティブさのレベルにより
3つのタイプに分けられるのでは、考えています。
それぞれ積極型(健康意識が高く積極定期に情報収集して動くタイプ)と協調型(周囲から誘われたり勧められたりすれば参加するタイプ)、
消極型(あまり関心がなく、困ってから医療機関などに行くタイプ)と呼んでいます。
―らいふ:積極型、協調型、消極型の3つのタイプですか。なるほど、斬新ですね。
確かに相手のタイプによってアプローチ方法を変えるということは、我々介護職が日頃から試みている点ですが、先生は具体的に分けて考えられて
いるのですね。
山下:はい。アプローチを変えることにより、相手のご入居者への伝わり方、浸透具合がまったく違うことは、日頃からコミュニケーションを取られている
介護職の皆様が一番感じられている点だと思います。
一方、高齢者のフレイル対策、健康支援、活動支援の3つについて、共通する対応策があります。
それは「歩けること」です。
―らいふ:「歩けること」ですか。かなりシンプルなポイントですね。
山下:歩くことが不安定になれば転倒し、転倒により骨折すればADLやQOLが極端に低下し、寝たきりのリスクが高まります。
また歩くことに対し不安を感じられると、外出する機会が減り、閉じこもり傾向、つまりフレイルと認知症のリスクが高まるのです。
―らいふ:事故形態では、圧倒的に転倒が多いです。
骨折し入院され、ADLが低下されてしまったケースも珍しくはありません。
「歩けること」が共通と言われると、確かにそのとおりですね。
山下:つまり、歩く機能を向上させることが、鍵となるのです。歩く機能に影響を及ぼす因子は、3つあると考えています。
「足、爪の機能不全や痛み」「外出意欲の低下」「外出しづらい環境」です。
―らいふ:なるほど、ご本人の身体的機能と気持ちの面、それを取り巻く環境、ということですね。
山下:そのとおりです。
今回は、特に「足、爪の機能不全や痛み」の因子を取り除くための、“元気に歩くための足づくり”をご提案したいと思います。
―らいふ:よろしくお願い致します。
山下:足や足の爪に問題を抱えられている中高年の方は、実に6割以上と言われています。
さらに後期高齢者では、その割合は増加します。しかし、後期高齢者が一様に同じ割合で転倒されているのではなく、下肢筋力の低下、
歩行・バランス機能の低下、足や足の爪の機能低下、これらが顕著な場合に転倒リスクが高くなります。
―らいふ:誰でも転びやすくなる、というわけではないのですね。
確かに、ご入居者によっては背筋を伸ばされスタスタ歩かれる方もいらっしゃれば、すり足でゆっくりと歩かれる方もいらっしゃいますね。
山下:目に見えて分かれば対策も取りやすいのですが、足の爪までは気にされていないケースが多いように感じています。
施設でも、日頃から健康体操等の対策を取られている所が多いかと思います。
これに加え、足や足の爪のケアを実施するだけで、さらなる転倒リスクの低下、活動量、歩行機能の向上が見込まれるのです。
―らいふ:では、ぜひとも先生が提案される足と足の爪の具体的なケアをお見せ頂けますか。
山下:はい。
◆ たかせクリニック山下先生 プロフィール
医療法人社団 至髙会 たかせクリニック
地域医療研究部部長 工学博士
山下 和彦(やました かずひこ)
専門:
医用生体工学、高齢者福祉工学、発達工学(工学博士)
略歴:
東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員
東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科 講師
同 教授
大阪大学大学院医学系研究科 特任教授
たかせクリニック地域医療研究部 部長
社会活動:
ITヘルスケア学会 理事
日本生活支援工学会 理事
特定保健指導の効果的な実施方法の検証のためのWG 厚労省
埼玉県志木市健康づくり市民推進協議会 会長
介護予防市町村モデル事業 委員 厚労省 等