【たかせクリニック高瀬理事との特別対談】
 第5回 山下先生特別対談その2 具体的なフットケアについて

   右奥:山下先生 右手前:高瀬先生


今回ご紹介する対談の内容は、認知症発症のきっかけにも大きく関係のある

“歩くこと”をテーマとしています。

 

歩く機能、そしてフットケアの専門家であるたかせクリニックの山下先生をお招きし、

お話をお伺いした内容を2回に亘り掲載します。

 

今回のテーマは「高齢者の歩く機能について」。大変有意義な対談となりました。

山下:前回は、足や足の爪のケアについて概要を説明しました。

  今回は、具体的なフットケアについて説明します。

 

―らいふ:よろしくお願い致します。

 

山下:日本ではまだまだ知名度が低いのですが、諸外国では、実は“足病”というカテゴリーが設けられているほど、足全般のトラブルに対して

   医療面がフォローされているケースが多いのです。

 

―らいふ:“足病”ですか?足に関する病気全般を指すのでしょうか。

 

山下:病気に限らず、例えば外反母趾や扁平足といった、通常とは異なる足の形状によって何らかのトラブルが生じてしまうケースも含みます。

 

―らいふ:外反母趾も病気扱いということ?

 

山下:痛みが生じ、何らかの手当てが必要になる場合もありますよね?

  “足病”と呼ぶと病気と思われがちですが、怪我の原因になる状態も指しますので、足全般に関するトラブルに対応するための分野と

  解釈頂ければ分かりやすいかと。

 

―らいふ:なるほど、眼科、耳鼻咽喉科といった並びというわけですね。

 

山下:はい。施設の皆さんにとって、日頃の介護は当たり前だと思いますが、意外とフットケアという視点では「何をすればよいのだろうか」

   という声をよく耳にしますので、まずはフットケアの重要性を説明します。

 

―らいふ:確かに、前回お伺いした内容が介護職員一人ひとり全員把握しているかと言われると、なかなか伺う機会は少ないかもしれませんね。

 

山下:フットケアは、ご入居者ご自身で実践可能なものもあります。

  足を温め、指の付け根や指を手でマッサージするのです。

  ご自分の手を押して気持ちいいと感じることを、足にもして差し上げる、というイメージでしょうか。

  2分程度でも、やるとやらないでは大違いですよ。

 

―らいふ:そう伺うと、イメージが湧きますね。

 

山下:一度転倒されたことがある方は、再び転倒されやすい傾向が確認されています。

  男性よりも女性が転倒されやすいことも確認されています。

 

―らいふ:ある程度傾向が分かれば、どのご入居者から優先に取り組めばよいか、ターゲットを絞り込みやすいですね。

 

山下:実は爪の形状や爪切りの方法を正しく知るだけでも、転倒リスクは減少させることができるのですよ。アプローチは様々です。

 

―らいふ:マッサージだけでなく、様々な角度から取り組むことができるということですね。

 

山下:最初にも申し上げましたが、やはり足や足の爪について正しい知識をお持ちの方はまだまだ少ないと思います。

  残念ながら足爪の変形や異常に対し、病院では「老化だから」と十分に治療が実施されないケースもあるのです。

  職員の皆さんも、医師から言われてしまったら「そうなのか」と受け止めざるを得ないでしょう。

  足のことに無関心なことが問題だと考えています。

  この現状に対し、少しでも正しい知識やアプローチ方法を知ってもらうための啓蒙活動も、私の務めだと感じています。

 

―らいふ:おっしゃるとおり、弊社では『フットケアマニュアル』といったものは整備できておりませんし、私自身も山下先生とのお話で

    初めて勉強させて頂いた内容が多々ございました。社員一人ひとりにも、ぜひ知って欲しい内容ですね。

 

山下:そう感じて頂けると嬉しいです。フットケアの効果は大きく、専門的なケアだけでなくセルフケアと運動指導を組み合わせることにより、

   転倒予防につながります。

  また、フレイル(体がストレスに弱くなること)の対策にも有効なのです。

  体験された方々からは「足の大切さや自分の弱い所が分かり、とても丁寧なケアに感動しました」

  「足の爪が綺麗になり、歩くのが楽しくなりました」との嬉しいお声も頂戴しております。

 

―らいふ:ぜひとも先生のご指導により、ご入居者の足の状態改善と職員の教育を実現させたいです。


◆ たかせクリニック山下先生 プロフィール


医療法人社団 至髙会 たかせクリニック

地域医療研究部部長 工学博士

山下 和彦(やました かずひこ) 

 

専門:

医用生体工学、高齢者福祉工学、発達工学(工学博士)

 

略歴:

東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員

東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科 講師

同 教授

大阪大学大学院医学系研究科 特任教授

たかせクリニック地域医療研究部 部長

 

社会活動:

ITヘルスケア学会 理事

日本生活支援工学会 理事

特定保健指導の効果的な実施方法の検証のためのWG 厚労省

埼玉県志木市健康づくり市民推進協議会 会長

介護予防市町村モデル事業 委員 厚労省 等