【たかせクリニック高瀬理事との特別対談】
 第6回 山下先生特別対談その3 サイズの合った靴選びの重要性

左奥:山下和彦先生 左手前:山下知子研究員


今回ご紹介する対談の内容は、認知症発症のきっかけにも大きく関係のある

“歩くこと”をテーマとしています。

 

歩く機能、そしてフットケアの専門家であるたかせクリニックの山下先生をお招きし、お伺いしたお話の3回目をご案内差し上げます。


今回のテーマは「サイズの合った靴選びの重要性」。大変有意義な対談となりました。


山下:前回は、具体的なフットケアについて説明しました。今回は、サイズの合った靴選びの重要性について説明します。


―らいふ:よろしくお願い致します。


山下:意外と軽視されがちなのですが、特に高齢者にとってサイズの合った靴を選ぶことは、非常に大切なことなのです。


―らいふ:靴選び、ですか。我々の施設では、ご入居時に介護用品のカタログから室内履きを選んで頂くことがよくありますが、どう大切なのでしょうか。


山下:らいふさんや他の皆様は、靴を購入される際は十分に吟味されますよね?靴屋で、何度も試し履きをしたり、人によっては足のむくみを気にして試し履きの時間帯まで慎重に検討したりされる方もいるようです。


―らいふ:なるほど、確かに靴の履き心地にはとても気を使って選びます。それをご入居者も同じように選んで頂けているかと言われると、そこまで気にしている者は少ないかもしれませんね。


山下:サイズさえ合っていれば、だいたいの介護用品の室内履きでしたら、履き心地は良いはずです。しかし、一か月後や半年後、本当にサイズが合っているのか、履き心地はどうなのか、チェックが必要な場合も考えられます。


―らいふ:実はサイズが少し大きかったけど、「少しなら大丈夫だろう」と本人も周囲も気にしない、という状況が発生する、ということですね。


山下:そのとおりです。ご存じのこととは思いますが、サイズが合っていない靴は転倒の原因にもなります。施設内で使用する靴ですと、つまり最も使用している時間が長い靴となりますので、それが合っていないなどということは、直ちに改善するべきことなのです。


―らいふ:スリッパやかかとを潰して履いている状況には注意するよう指導していますが、介護用の靴のサイズまでは気が回っていませんでした。


山下:これを機に、ぜひもう一度皆様の靴のサイズが適切かどうか、チェックされることをお勧めします。実は、靴の他にも気にしておくべきポイントがあります。


―らいふ:ぜひお聞かせください。


山下:はい。それは、足自体の状態の観察です。前回はフットケアの具体的な内容について触れましたが、今回注目して欲しいポイントは、その中でも観察すべき「爪」と「タコやウオノメ」です。


―らいふ:かなりピンポイントですね。


山下:靴選びと同様、実は軽視されがちな足の爪やタコ等の皮膚の状態によって、本人が気付かないレベルで歩行のバランスに悪影響を与えているのです。


―らいふ:爪が伸びていると転びやすいということですか?


山下:それも一つの原因です。他にも、片方だけ爪を切っていたり深爪をしていたり、片足にだけタコやウオノメが現れていたりすると、それだけで左右のバランスが崩れやすくなるのです。


―らいふ:それが歩行に影響して、バランスを崩すということですね。


山下:そのとおりです。例えば、革靴の片足のかかとだけすり減っている人を見ることはありませんか?これは、歩行のバランスが知らない間に崩れている証拠です。荷物を片側の肩にかけたり、いつも同じ側の手で鞄を持っていたりすると、意外と歩行のバランスは崩れていることが多いです。片方の足にタコができているが、痛みはないから放置している、というケースもあるかもしれません。


―らいふ:入浴時の皮膚状況の観察が重要ということですね。


山下:適切な爪切りや、タコとウオノメの場合は早期の治療が重要になります。日々の訓練としては、足の指のグーパー運動やタオルを掴んで寄せる訓練も効果的です。靴のサイズの見直しや皮膚観察の見直しと共に、ぜひ試して頂きたいと思います。



―らいふ:大変勉強になりました。ありがとうございます。施設におけるフットケアについて、積極的に取り組んでいきます。

◆ たかせクリニック山下先生 プロフィール


医療法人社団 至髙会 たかせクリニック

地域医療研究部部長 工学博士

山下 和彦(やました かずひこ) 

 

専門:

医用生体工学、高齢者福祉工学、発達工学(工学博士)

 

略歴:

東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員

東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科 講師

同 教授

大阪大学大学院医学系研究科 特任教授

たかせクリニック地域医療研究部 部長

 

社会活動:

ITヘルスケア学会 理事

日本生活支援工学会 理事

特定保健指導の効果的な実施方法の検証のためのWG 厚労省

埼玉県志木市健康づくり市民推進協議会 会長

介護予防市町村モデル事業 委員 厚労省 等