乾癬とは

[監修]東京慈恵会医科大学 名誉教授 中川 秀己 先生

乾癬は皮膚の炎症症状を伴い慢性の経過をとる病気です。「かんせん」という名前から「人から人にうつる」と誤解されやすいのですが、他の人に感染する病気ではありません。皮膚症状の見た目や現れる場所は人によってさまざまですが、頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざなど比較的外からの刺激を受けやすいところに出やすいという傾向があります。典型的な症状は、皮膚から少し盛り上がった[浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)]赤い発疹[紅斑(こうはん)]の上に、銀白色のフケのようなもの[鱗屑(りんせつ)]がくっついてポロポロとはがれ落ちます。

乾癬の症状の一例
 

乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まって種々の炎症を起こす物質を出しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また皮膚の細胞が、正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態になっています。過剰に増殖した細胞により、皮膚は厚く積み上がって盛り上がり、最終的には鱗屑となってはがれ落ちていきます。

国内の乾癬患者さんは約43万人(おおよそ300人に1人)といわれています。

乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。男女比は約21で男性に多く、発症年齢は男性では30代と60代、女性では20代と50代が多いようです。

乾癬は症状によって次の5つに分類されます。

1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

2. 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)

3. 滴状乾癬(てきじょうかんせん)

4. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

5. 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

乾癬の原因は何ですか?

乾癬の原因についてはいろいろな研究が進んでいますが、まだ完全には解明されていません。

乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられています。糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、肥満なども影響するといわれています。

乾癬は症状をコントロールしながら上手に付き合っていくことが大切です。

乾癬そのものを完治させるのは難しいですが、最近はさまざまな治療方法が開発されて、症状がほとんどない状態にすることも可能になっています。また、治療だけでなく、食生活を見直す、体重を少し落としてみる、たばこをやめる、などの生活習慣の改善でも治療の効果が現れやすくなったり、乾癬の症状そのものが良くなったりするともいわれています。

気になることは、どんどん主治医に相談することが大切です。

乾癬は人にうつることはありません。

 乾癬は感染する病気ではなく、患者さんの発疹に触れても、温泉やプールに一緒に入っても、他の人にうつることは絶対にありません。

乾癬になりやすい体質が遺伝する場合もありますが、過度に心配する必要はありません。

 乾癬になりやすい体質は遺伝すると考えられていますが、乾癬の家族内発症頻度(親や兄弟、祖父母に乾癬患者さんがいた場合の発症率)は5%程度3)といわれており、過度に心配する必要はありません。

まずは皮膚科を受診しましょう。

乾癬の種類や症状、患者さんのライフスタイルなどによって、適切な治療方法は異なります。まずは皮膚科を受診して、確実な診断と適切な治療を受けることが大切です。

「乾癬が治る」と謳(うた)う間療法もありますが、科学的根拠がなく、かえって悪化してしまうこともあるので注意が必要です。また、各地に患者会があり、患者さん同士で乾癬についての悩みや不安を話し合ったり、医師に相談したりできるので、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

乾癬の種類と症状

[監修]東京慈恵会医科大学 名誉教授 中川 秀己 先生

乾癬にはさまざまな種類があり、症状の現れ方が異なります。症状によって以下の5つに分類されます。

1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

2. 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)

3. 滴状乾癬(てきじょうかんせん)

4. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

5. 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

“尋常”とは普通という意味で、乾癬患者さん全体の約7080%が尋常性乾癬です。

皮膚が赤くなる[紅斑(こうはん)]、皮膚が盛り上がる[浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)]、銀白色のフケのようなもの[鱗屑(りんせつ)]が付着しはがれ落ちるなどの症状がみられます。

頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざ、おしり、太もも、すねなど外部からの刺激を受けやすい部位でよくみられますが、それ以外の部位にも発疹が出る場合があります。最初は直径数mm程度1)の小さな発疹から始まり、次第に乾癬特有の赤く盛り上がった発疹となります。乾癬では症状が出ていない皮膚に引っ掻くなどの刺激を与えると、その刺激をきっかけに新たな発疹が現れることがあります。これをケブネル現象といい、衣服や眼鏡、ベルトなどの刺激によっても起こることがあります。衣服は柔らかい素材やゆったりしたサイズのものを選び、皮膚を掻いたりしないようにしましょう。

また、乾癬患者さんの4080%は爪にも乾癬の症状がみられ2,3)、爪が先端から浮き上がって白くみえたり、爪の表面にポツポツとした凹凸ができたりします。

かゆみは約50%の患者さんでみられ4)、かゆみの程度は人によりさまざまです。

 
2. 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)

関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)とも呼ばれます。

乾癬患者さんの中には、手足の関節や、首から背骨、アキレス腱、足の裏などに痛みや、腫れ、こわばりを訴える方もいます。このように、乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎といい、乾癬患者さんの約15%に合併するといわれています5)。症状は関節リウマチに似ていますが、異なる病気です。
 乾癬性関節炎の多くは関節に症状が出る前、または出ると同時に乾癬の皮膚症状が現れます。しかし、皮膚症状が遅れて現れることもあるので気になる症状があれば、主治医に相談することが大切です。 

乾癬性関節炎の症状の現れ方

乾癬性関節炎では、腫れ、変形、痛みなどの症状が手や足の指先の関節に現れることが多いのですが、背中や首がこわばったり、骨盤が痛んで歩きにくくなったり、かかとの後ろのアキレス腱や足の裏に痛みが出たりすることもあります。

また、爪に乾癬の症状がある場合は、関節炎を起こしやすいといわれています。

乾癬性関節炎は、患者さん自身が乾癬の皮膚症状と関節の症状が関係していることに気づきにくいため、見過ごされることがあります。関節に症状が出ると、日常生活に支障を生じ、関節の症状の治療が遅れると重症化しやすく、急速に関節症状が進行し関節が変形し戻らなくなることがあるため、早期に発見し、少しでも早く治療を開始することが重要とされています。

現在、乾癬性関節炎を見つけるための質問票が開発されており、早期発見に活用されています。その一つにPASE(ペース)と呼ばれる質問票があります。
3. 滴状乾癬(てきじょうかんせん)

直径0.52cm程度6)の小さな水滴大の発疹が全身に現れるのが特徴です。小児や若年者に多く、乾癬患者さんの約4%7)に発症します。風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎(へんとうせんえん)が誘因となることが多いといわれています。

きっかけとなった感染症を治療することで症状は治まりますが、まれに何度も再発を繰り返し、尋常性乾癬に移行することもあります。

4. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

尋常性乾癬が全身に広がって、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び8)、細かい鱗屑がはがれ落ちる状態(紅皮症)を乾癬性紅皮症と呼び、発熱や悪寒、倦怠感などを伴います。紅皮症の誘因は皮膚炎、感染症、薬剤などいくつかあります。

発症率は乾癬患者さん全体の約1%9)で、乾癬の治療が不十分だった場合や科学的根拠のない治療を行った場合、もしくは治療を行わなかった場合などに発症することがあります。 

5. 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

 乾癬のうち、発熱や皮膚の発赤とともに、膿(うみ)の入った球状の袋[膿疱(のうほう)]が多数現れる疾患を膿疱性乾癬といいます。この膿疱には細菌が含まれていないので周りの人にうつることはありません。
 発疹が手のひらや足の裏、指先など一部だけにみられる限局型と、急な発熱とともに全身に発赤と膿疱が現れる汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)があります。汎発性膿疱性乾癬の発症頻度はまれですが、重症疾患でほとんどの患者さんは入院治療が必要です。汎発性膿疱性乾癬は厚生労働省の希少難治性疾患(指定難病)に指定されており、認定基準を満たすと医療費助成が受けられます。

どのような治療方法があるの?

[監修]東京慈恵会医科大学 名誉教授 中川 秀己 先生

乾癬の治療のアプローチには主に、「紅斑(皮膚の赤み)の主な原因である炎症を抑えること」と、「鱗屑(銀白色のフケのようなもの)の主な原因である皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えること」の2つがあります。治療方法は大きく分けて「外用療法(塗り薬)」、「光線療法(紫外線照射)」、「内服療法(飲み薬)」、「生物学的製剤(注射または点滴)」の4種類です。また、2012年に膿疱性乾癬に対して「顆粒球単球吸着除去療法(かりゅうきゅう たんきゅう きゅうちゃくじょきょりょうほう)」が保険適用となっています。

乾癬には5つの種類があり、また、患者さんそれぞれで症状の出かたや重症度が異なります。そのため、各治療方法を単独もしくは組み合わせて行っていきます。治療の効果や副作用、患者さんのライフスタイルなどにより、治療方法が選ばれますので、主治医に症状をしっかりと伝え、治療目標や希望をよく話し合い、乾癬と上手に付き合っていくことが大切です。